ぼ〜ぐなん広場(63)


     文字指導(1) アルファベット
Q:   文字指導について、質問させてください。
  低・中学年では年間10時間、高学年では35時間の指導をしています。
  中1英語へスムースにつなげるためには、文字指導も必要と考え、小6末までに、
       �@アルファベットの大文字・小文字を正しく書けるようにする
    �A簡単な単語を書かせる
  というような指導計画を立てていますが、これでよいのかどうか不安です。

A:   文字指導については、非常に関心が高いにもかかわらず、「文字は教えない」
  という原則が強く主張されていた時代もあって、水面下に潜ったまま、いろいろ
  な指導が行われてきました。文字指導について議論することさえはばかられる、
  という風潮もあり、実践者の間で有効な指導技術があっても、それが表に出るこ
  とが少なかったように思います。

   ところが、今年度から、「英語ノート2」で最初の2つのレッスンで文字に関
  心を持たせようとする単元が設定され、文字指導が大手を振って小学校英語の表
  面に出てきたように思われます。この時を逃さず、子どもがアルファベット文字
  をどのように身につけていくのか考えてみるのは、中学以降に続く英語学習の基
  盤を作る上でも、大変重要なことだと思います。「広場」でも、これから真剣に
  取り組み、皆様と意見を交換していきましょう。

       ご質問の�@に触れながら、数回に分けてお答えしていきたいと思います。

  ●アルファベットの大文字・小文字を正しく書けるようにする

   正しく書けるようにする指導に異論があるはずはありません。問題は、いつ、
  どのように、ということでしょう。小学校では3年生の時に、ローマ字指導が4
  時間設けられています。そこで大文字・小文字の簡単なものを読めて、書けるよ
  うにする指導が行われると思います。4時間、多分毎週1回1ヶ月行われる、と
  いうことになるのでしょうか。国語指導の中で行われるとすると、いろいろな指
  導方法がとられることと思います。これは、日本語の文章をローマ字化したり、
  すらすらと読めるようにする、というところまではいかないでしょう。現在日本
  語をローマ字表記にしよう、という主張をする人は少ないと思われますから、駅
  名、地名、自分や友だちの名前、通学している学校の名前などが認識できて、書
  ける、というあたりで終わっていると推察しています。

   ローマ字指導を始めると、英語の表記に使われるアルファベット文字が持って
  いる音を日本語の子音や母音に変えてしまう現象が起きます。「ti」は「ち」で
  すから、千葉君は Tiba-kun になります。でも千葉君が千葉に住んでいるとした
  らJRの駅名は CHIBA となります。国語では訓令式表記を取りますが、一般社会
  では、会社名も地名もヘボン式を採用しているので、統一が取れない現象が起こ
  っています。これも、子どもが「おや?」と思いつつ推量して読んでいくでしょ
  うから大した問題ではない、考える力が付く、文字の持つ音についての関心が深
  まる、と言われれば私も納得はいきます。それでも、千葉の先生方が銚子や勝山
  や船橋を教えるときはどうなさるのだろう、と思わぬでもありません。

   ところで、子どもたちがアルファベット文字に触れるのはローマ字指導を受け
  るときだけでしょうか。算数や理科で分量を表すとき、低学年から小文字を使っ
  ていないでしょうか。音楽の教科書に載っている楽譜にアルファベット文字はな
  いでしょうか。情報の時間にコンピュータを操作することを学習するとしたら、
  キーボードの文字を見ています。

   子どもの文房具や衣類にはアルファベット文字がデザインされていますし、家
  に帰れば、テレビ欄にもアルファベット文字がたくさんあります。おやつの菓子
  袋や箱にも、アルファベット文字は一杯。毎日の生活の中で無意識にアルファベ
  ット文字に触れているので、親近感を持っています。それは、その一つ一つが子
  どもにとって意味があるからです。

   これをあの4本線上に正しく書く、という段階で、何人かの子どもたちにとっ
  ては無味乾燥な作業になりかねません。remon = lemon,  raion = lion, 
  ierou ka:do = yellow card ということになると、文字の持つ音は全て日本語化
  されますから、高学年になってから、英語の文字から発音を察知しようとすると
  きにはローマ字の知識を排除しなければなりません。英語の音が先に入り、文字
  にも少し慣れてきたころに、ローマ字(ヘボン式)のルールを覚える、という順
  序の方が、子どもにとっては楽ではないかな、と思います。でも、こんなことを
  言っても、学習指導要領に準拠して指導案を作られる先生方にとってはどうにも
  ならないことですね。こんなことを心に留めて指導するほか無いでしょう。

   一つ提案させてください。ローマ字指導がすんだあとからは、チャンスを見つ
  けてローマ字を板書したり、子どもの衣服やハンカチ、文房具などに書いてある
  英語を読んであげたりして、文字が情報伝達に役立っているところを見せてあげ
  てください。ローマ字に触れて得た文字への親しみを継続させておくと、高学年
  になって「英語ノート2」の最初の単元2つを指導し、アルファベット文字を書
  かせるときに、子どもはすんなりと文字を受け止めてくれるでしょう。


                          久埜 百合 (中部学院大学)

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