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    心に残る授業
 昨年参観させていただいた心に残る授業の話をしようと思います。 1・2年生合同の授
業でした。担任の先生お二人とALTの三人で指導に当たられていました。

 授業のテーマは「動物園をつくろう」。黒板にはいろいろな大きさや形の檻がさびしそ
うに動物が入ってくれるのを待っています。どの動物をいれるか決めるのは子どもたちで
す。子どもたちは動物の絵カードを持っているほうの先生のところに行って "Dog, please."
などと動物園に入れたい動物を伝えます。先生は "Here you are." とカードを渡し、子ど
もは "Thank you." とお礼をいいます。次に、磁石を持っているほうの先生のところに行
くと先生は "Here you are." といって磁石を一つくれます。子どもは "Thank you." と言
って自分のカードを檻に貼ります。

 これだけの淡々とした活動なのです。もちろんできあがった動物園をみて喜びを共有し
たり、どんな動物がいるかもう一度味わったりするのですが、異常な興奮も誰が勝った負
けたということもない実に穏やかな授業でした。
 この授業の前に先生方とお話しさせていただいて「英語の発音のお手本になろうと思わ
ないでください。その代り、丁寧に英語を使うお手本になってください」とお伝えしまし
た。先生方は子どもの「この動物がほしい」という気持ちを受け止めて、丁寧に心をこめ
て "Here you are." といいます。磁石一つ渡すにも、「大事にしてね」とでもいうように 
"Here you are." といいます。 もともと丁寧な先生たちだったということもありますが、
子どもに物を渡す動作も丁寧で、見ていて大変心地よかったです。そして、子どもたちも
つい心からお礼を言ってしまうのでした。あの時、いとおしそうに動物のカードや磁石を
受け取る子どもたちが発した "Thank you." のひとことは、口が言わせたのではなく、心
が言わせたものだったのだと思いました。

 「英語活動を始めて日本語でもお礼を言う子が増えた」とか「挨拶をする子が増えた」
という報告を聞くことがありますが、今日お伝えしたいのはそうしたことではありません。
(もちろん英語で心をこめて "Thank you." ということが日本語でもお礼を言うことにつ
ながれば素晴らしいと思っています。)もし「さあ、今日は英語でお礼のいい方を勉強し
ましょう。はい、Repeat after me. Thank you. はいもう一回、Thank you.」と促され 
て言う Thank you. と、心から思わず感謝してしまいながら言うThank you. とでは、ど
ちらがより深く子どもの心に住みつくだろう、ということなのです。

 心から発した意味のある音と、ただの音量にすぎない音とでは身につくところがちがう
のではないか、と思わされた授業でした。


                      粕谷 恭子  (東京学芸大学)

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