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         @低・中学年の指導 
         A「えいごリアン」を使ってみて
@低・中学年の指導
Q:  新指導要領が公表されて、私の学校でもその方向で指導計画を立てようとする研究    が始まりました。今までは1年生から6年生まで年間10回から20回の英語活動を   実施してきましたが、これからは高学年を35回として年間計画を立てようとしてい    ます。     そこで、中学年以下の4年間をどうすればいいのか、ばっさり切ってしまうことも    出来ませんが、授業時間を確保するのは難しいので困っています。子どもたちは英語    に慣れ親しんで高学年になるにつれて力をつけています。これからどうしたらいいで    しょうか。 A:  この問題は、小学校の研修会で必ず出てくる質問です。今まで低学年では年間5回    くらいしかやってこられなかったところでも、その5時間の効果を思い返して考え込    まれているようです。新指導要領によって、2011年から5・6年生で英語活動を    年間35コマ必修として導入されることになりました。今年から移行措置をとり、各    地の小学校で英語活動の授業時間を増やす傾向が強くなっています。中学年の授業を    どうすればいいのか、必修になる5年生までに、どんな指導をすることができるのか    を考えてみましょう。      5年生から、ということは、5・6年生を担任しなければ英語活動をしなくても済    む!という偽らざる気持ちもあるのだ、とある校長先生が笑いながら話してください    ました。このような感想は、稀な例ではないようです。ところが、高学年では必ず開    始、ということになると、5年生で初めて週1回英語に触れさせなければならない、    ということも生じてきます。これは大変です。小学校の先生はよくご存知のように、    4年生の後半から、子どもたちは急に大人びてきて、ものの考え方や学習能力にも中    学年から脱皮していこうとする兆しが見えてきます。5年生から、というのであれば、    幼稚な歌やゲームには目を輝かしませんから、英語の音を中心とした指導方法に手直    しをして、授業時数を少なくとも中学並みに増やす、というような思い切った方法を    とらないと、指導が難しくなります。     100年を越す経験を積んでいるところもある私立小学校の教師たちも、1年生か    ら英語を教科として指導してきたにもかかわらず、週あたり1〜2時間で行う高学年 の指導は低学年よりも難しい、と悩みを打ち明け、研究会でも必ずお互いの実践を披    露しながら話し合います。5年生から開始する例はありません。     9歳くらいまでに英語の音の仕組みに体で触れさせておくことが、その後の学習に    良い結果をもたらすことは、議論の余地がないのです。ですから、5年生から年間    35コマの授業を実施することを踏まえて、子どもたちに何らかの心の準備をさせて    おくことは、指導する教師にとってもラクに授業を進めることができるので、何とか    工夫をして今までどおり中学年までの英語体験を継続していきたいと思います。     1年生から4年生まで、授業時間の確保については一様ではありませんが、いろい    ろな工夫を凝らして実践されてきた学校はたくさんあります。一例を挙げると、9分    授業を週あたり5日実施しているところがあります。ということは45分間の授業を    5分割したことになるのですが、確かにこの短い時間に英語を聞いたり、歌を歌った    り、簡単なゲームをしたりして元気よく英語を使う経験を重ねています。別の例では、    15分授業を週当たり3回とし、少なくともその1回は子どもの好きな英語のビデオ    を見て、そのおもしろさにどっぷり浸る、先生も子どもと一緒に笑ったり歌ったりで    15分を楽しむ、後の2回は、又それを見たり、その中から考え出したゲームをする、    ということで、これも時間としては45分の1コマを3分割してそれに当てるもので    す。     この考え方からすると、学校の実態に即して使える1コマを、20分ずつ英語と計    算問題や漢字の書き取りや本の読み聞かせのような授業とを組み合わせて週2回、5    分間は気分の切り替え、合計45分という計算で授業を組むことも可能です。     英語だ!と真正面からぶつかり合うのではなく、それとなく英語をもぐりこませる    方法もあります。給食の時間に、食材の中から英語で言えるものを探す、その間に英    語の歌をCDで聞かせておく、ということも先生の教材研究とか教具つくりなどとい    う時間を必要としなくてもできることです。聞かせる曲は、直ぐに歌わせたくなるも    の、というよりは、むしろ鑑賞に値するような、先生ご自身がお好きな歌を流してお    くのがいいと思います。仮に子どもは好きでなくても、誰かが「うちのお父さんもこ    れ聞いてるよ」とか、「お母さんがこれを歌っていた」などと話しかけてくるかもしれ    ません。「先生もこの歌がすきなの」と応じて、「覚えましょうね」とは絶対にいわない、    でもある日「歌詞カードある?」と言ってくればしめたものです。上手に歌おうと練習    させる必要はありません。ただ歌詞カードがあれば渡す、という程度のことでも、子    どもにとっては大きな刺激になるはずです。     ここで問題なのは、この9分なり15分なり20分なりの時間に、どんな英語を体    験させるか、そして、それが高学年での合計70コマの英語体験とどう結びつくか、    それが指導要領の言うように「コミュニケーション能力の素地」を養うことになるのか、    ということです。答えは簡単、ほんものの英語に近づきやすいような経験をさせる、    ということに尽きます。 それには、一人一人の先生が持っておられる「英語とはこう    いうものだ」 というイメージを日々豊かにして、10数年後の社会を背負う子どもた    ちが、小学生のときに英語に触れておいてよかった、と思ってくれるような質の英語    を選んでいくこと、この選択眼だけでなく選択"耳"を持つことが教師に求められてい    ます。一人だけで頑張ろうとするのではなく、同僚や友人との情報交換によって、よ    り良いものを得る連係プレーも必要です。     この「広場」もその情報交換の場となれますよう、皆様のご意見に耳を傾けながら    努力の一年にしたいと思います。                              久埜 百合 (中部学院大学
                                                     

  
A「えいごリアン」を使ってみて
    
 平成23年(2011年)から高学年で週当たり35コマの「外国語活動」が公立小学校で
必修となる。配布される「英語ノート」をベースに授業を進めていく学校が多いと思われる。
しかし研修制度が充実しているとは思えない現状で、英語指導の経験が少ない学級担任の不安
は大きいことが想像される。その先生方にとって強力な助っ人になるのが、2000〜2001
年度制作NHK 学校放送番組「えいごリアン」である。(再放送を重ねたが、2007年度で
放送は終了。現在、VHS/DVD で市販されている。)この番組は、年齢に関係なく楽しめる、
実に不思議な魔力を持った番組である。勤務校では3年生に見せているが、1度見せたら次に
教室に入ると、必ず「今日もビデオ見る?」と聞かれるぐらい人気が高い。目を輝かせて最後
まで食い入るようにテレビ画面を見ている子どもたちの姿に驚きすら覚える。公立小学校での
飛び込み授業の折に見せる時も、全く同じ反応が得られる。

 番組は、英語に挑戦するユージ、彼の手助けをする仲良しマイケルとジャニカの3人を中心
に進行する。二人のわかりやすい英語の話し方は、教師にとって teacher talk の良い見本と
なる。2つのスキット、アニメのマヨケチャ、ユージが変身したミニ・ユージが外国人と片言
の英語を使って色々な異文化体験をするコーナー、他教科の内容も盛り込み、取材フィルムの
迫力ある画面が続く映像コーナー、歌などで構成されている。どの場面でも、1つの決まった
英語表現(番組タイトルの表現)がいろいろな状況で適切に繰り返し使われている。どの回で
も15分の中に20回以上基本表現を聞くことができるので、英語の体験がない子どもでも大
体の意味を類推することができる。

 子どもの学びが目に見えるかたちで起こることもある。ある時 How many legs does a 
spider have? というタイトルの映像を見せていた。この中にHow many takoyaki do you 
have? とマイケルが言う場面がある。自分が持っている箱の中にあるたこ焼きの数がひとつ
足りないので、不満そうにユージたちに聞く場面である。実は自分が持っている箱の蓋の裏側
に1つがくっついていたというオチがあるのだが、あまりにその場面にはまった表現だったの
で、一人の子どもがそのことばを覚えてしまったのである。それも私の勤務校の生徒だけでは
なかった。ある公立小学校の先生も同じ経験をした。たった15分という短い時間であっても
「えいごリアン」を通して「子どもの学び」がおこることを示す好例だと思う。

 もう一例ご紹介したい。それは、2000年度の最後の番組でミニ・ユージがインターナシ
ョナル・スクールの子どもたちと仲良く「だるまさんがころんだ」のゲームをしているシーン
を見ていたときのことだった。どこからとなく自然発生的に、子どもたちの拍手が聞こえてき
た。ミニ・ユージの堂々たる英語の使い手としての姿に子どもたちは自分の姿を重ねていたの
かもしれない。こんなところに今言われる「コミュニケーション能力の素地」が育っていると
思う。

 私たち教師は、子どもたちに出来るだけ自然で、わかりやすい、本物の英語を聞かせて、英
語という言語に特徴的なリズム・イントネーションを体に染み込ませたいと願い、授業では、
ことばがことばとして機能している状況を上手に仕掛けていきたいと腐心する。「えいごリア
ン」は、その両方を提供してくれる教材である。「英語ノート」が意図しているところをさら
に膨らまして、子どもたちが活発に英語を使うようになるサポートをしてくれると確信する。
廃止されてしまった「えいごリアン」のホームページには、番組に添った子ども用のゲームコ
ーナーから先生のため授業案、基本表現を使ったアクティビティーの紹介、公立小学校で実践
した「えいごリアン」を使った授業の動画まで含まれており、まさに至れり尽くせりだった。
「えいごリアン」の番組とホームページが復活されることを願わずにいられない。
  

                          佐藤 令子 (田園調布雙葉小学校)
    ※注  「えいごリアンゲーム」は、引き続き http://www.nhk.or.jp/school/bangumi/eigo/2-hp3-game.html で楽しめます。
※注  「えいごリアン(2000-2001)」のDVDは、こちらからもお求めいただけます。

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