A Happy New Year!   
       ぼーぐなん広場の皆さま      あけましておめでとうございます    いろいろなことのあった2008年、本当に366日あったのかしら、と思わずカレンダー   を見直すくらい、あっという間に過ぎてしまった一年でした。      拠点校に「英語ノート(試作版)」が配布され、文部科学省から学級担任の先生方をサポ   ートするための資料が数種類届くようになったことで、 いつも以上に小学校現場での英   語活動は活気付く気配を感じました。皆さまのところは如何だったでしょうか。      「英語ノート」を授業で使われた先生方からの感想が洩れてくるようになった年の暮   れ、「英語ノート」のデジタル教材が公表され、2009年にはいよいよ小学校英語でも   電子ボードを使った授業が行われるようになるのだと感じました。各校に電子ボードが   1台ずつ配置されるまでには時間がかかるのかもしれませんが、授業形態が少しずつ変   化していくかもしれませんね。    高校での英語教育が今まで以上にアクセルを踏み込んで、「英語で授業をする」など、   英語が使える日本人の育成に更なる拍車をかけようとする提案がなされ、これからの英   語教育の指導目標はさらに高いところに設定されるような機運が盛り上がってくる気配   を感じます。そのような高校での英語教育を支えるためにも、小学校英語で「英語習得   の素地」を養っておくことが必要になるでしょう。    2009年の第一歩を踏み出すために、改めて小学校英語でどんな指導をするのか、再   考したいと思います。教師がそれぞれに思い描く到達したい英語のイメージの輪郭を明   確にして、授業内容を整理し、指導技術を向上させたいものです。全国の希望する小学   校に配布される「英語ノート」を片手に、どのような実践を積み重ねていけるのか、又   広場で意見交換ができるようにしたいと願います。    皆さま、どうぞ広場をそのような談論の場としてご活用ください。                               久埜 百合

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    音読指導
Q:   広場前便を読みました。いよいよ小学校で英語を経験してきた子どもたちを受け入
  れて、中学での英語教育をさらに充実していかなければならないのだ、と考えさせら
  れました。そのために中学でしなければならない指導の中で、音読指導も重要になる
  のではないかと思いました。音読指導はどのように考えられますか。また、どのよう
  なところに着眼するのが小学校英語を生かすことになるでしょうか。

A: こうして、広場に集まって、ピンポン玉のようにQ&Aが行き交い、テーマが発展
  していくことは、とてもありがたく、感謝申し上げます。次の質問はどうなるか、と
  わくわくしながら、お答えしていきます。ただし、この答えは、唯一の正解というこ
  とではなく、今まで経験的にいろいろな年齢層の学習者と試してきたことを一例とし
  てお伝えしうと思います。それは、さまざまな授業を参観して考えさせられながら自
  己修正をして辿り着いたことでもあります。

   「音読」というからには、学習者がしっかり文字を読める段階のことを想定しがち
  ですが、先ず、小学校でどんなことが出来るのか少しお話しておきたいと思います。

   文字指導をある時期神経質なほどに避けていた小学校における英語指導でしたが、
  現在では、フォニックスという手法で、文字の組み合わせが作り出す音を教えること
  で単語を読めるように導き、ひいては文章を読めるようにしようとする指導を推奨す
  る考え方を取り入れているところが出てきています。この指導を経験した子どもたち
  は、単語を続けて音声化することができるようになっています。

   この指導を受ける機会のなかった子どもたちは文字が読めないと思われるかもしれ
  ませんが、さにあらず、NHKをはじめとする日常眼にするアルファベット文字を違
  和感なく読み、他の教科で使われている km のような記号は日本語の一部として受け
  入れていますし、英字新聞のような資料の中にも知っている単語や固有名詞を探して
  読もうとしています。

   さらに、内容の理解がしっかりできていて音の流れも滞ることなく発音できるメッ
    セージが文字化してあるとき、それを読んでもらうと、自分でも読めたような気がし
  て後について読もうとします。これが小学生にも可能な、初歩的な「音読」の一歩と呼
  びたいと思います。
  
   この一種独特な「音読」をするとき、その意味を伝えようとしている人に成り代わっ
  て抑揚をつけ、気持ちを込めてモデルとなる読みを聞かせ、真似をさせます。
    Where are you going?   I am going to the bookstore.
  というダイアローグを、放課後帰宅する先生に出会ったときの先生と子ども・お留守
  番をしているとき本を買いたくなってお母さんが帰ってくるのを玄関の外で待ち構え
  て居たときのお母さんと子ども・怪しげな風体の人をお巡りさんが見つけたときの2
  人の対話・仲良しの友だちと道ですれ違ったとき…など、いろいろな場面で声の調子
  が変る読み方を経験させて、英語を口にするおもしろさを感じ取らせます。

   このよう場面を考えながら英語を使ってみると、「音読」するときの声の勢いが違
  います。意味の伝わり方も違います。答えたくて答えるとき、問い詰められて否応な
  く答えさせられているとき、そんな気持ちを表現しながら読むことに慣れさせたいと
  思います。意味を伝えるために英語が使われている感覚を養いたいからです。
     
   さて、中学生になって、教科書の英文を音読するとき、この状況の作り方をどれだ
  け大事にしながら授業が出来るでしょうか。
    Where is the box?   It is on the table.
  こんな文章があったとき、前置詞を教えるのだ、と思って音読させるときには on に
  ストレスを置く、Whereという疑問詞を教えるのであれば、その発音もしっかり聞か
  せようとして、Whereを殊更に強く発音します。「ボールはどこだっけ?」という気持
  ちはあまり込められていません。

   一事が万事、常にこのような読み方をモデルとして聞き、復唱して兎に角よどみな
  く英語を読めるようになった大学生に、マザー・グースの詩を音読してもらおうとし
  たとき、あまりにも抑揚のない読み方をされてびっくりしたことがあります。意味は
  分かっているのですが、単語の羅列に終始し、詩にこめられた意味を表情豊かに表現
  することができないのです。ユーモアも皮肉も何も伝わってきません。

   そこで一計を案じて、小学生の暗誦大会に使うやさしくておかしみのある短い文章
  を音読する練習をしてもらいました。意味が分からないと暗誦できない小学生たちは、
  意味を頼りに暗誦していきますので、イントネーションが自然ですばらしい表現力を
  発揮します。意味を伝達するために暗誦している、という気持ちが入っているからな
  のですが、大学生は、ただひたすら発音できる単語を数珠繋ぎにして音声化している
  だけ、とでもいうような読み方で、音読している本人がどんな気持ちで読んでいるの
  かどうかも全く伝わってこないのです。文字を音にはしているけれど、口だけ動いて
  いて意味は抜けていってしまっている、目が文字だけを拾っている様子です。
  
   音読する内容を把握しきれないまま読み上げている人に共通するのは、一つの音節
  を同じ音程で発音する傾向がみられ、その音節の中で音程が上がったり下がったりす
  ることで表情がかもし出される、ということを練習するのがとても難しいようです。
  この無表情な読み方は、母語である日本語でも起きるので、"棒読み"と言われる所以
  でしょう。抑揚で意味を伝えるのは、英語も日本語も同じです。ホント!という言い
  方を語尾を上げて言うか下げて言うかで意味が違うのは、英語で Really? と言うとき
  に語尾を上げたり下げたりで意味が変るのと全く同じです。短く、つっけんどんに言
  うか、ゆったり言うかでも意味は変ってきます。その辺りを体験的に学ばせたいと思
    います。
  
   音読指導は、個々の音素の発音の正確さも大切ですが、それらの連続する音の流れ
  で、何を伝えようとするのかも考えさせることが必要です。言葉が生き生きとしてく
  るためには、やはり内容を理解し、その心理の動きを再現することの大切さを感じ取
  らせることが先決です。意味が分からなければ音読はできない、意味をしっかり捉え
  させれば、その意味を伝えたいと思う気持ちから自然な抑揚が生まれてきます。子ど
  もたちが英語でゲームをしているとき、音素の発音は未熟でも、イントネーションが
  とても自然になるのは、その証拠だと考えています。

   そのときに、母音や子音の音が不正確であれば伝わり難い発音になってしまうのも
  事実です。車の両輪のように、意味を捉えさせることと、発音を身につけることの両
  方を大切にしていきたいと思います。

                      久埜 百合  (中部学院大学)

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