48)
コミュニケーション能力の育成とは?
Q: 英語教育における、「コミュニケーション能力の育成」とは何を指すのですか?
   私は、「考えや情報を適切なスピードで、より正確に理解・伝達できる英語力の育成」
   と考えていましたが、
  「積極的に英語でコミュニケーションを図ろうとする態度の育成」と理解すべきなので
    しょうか。: 学習指導要領に「コミュニケーション」というカタカナ語が使われるようになったのは、
    現行の指導要領のその前の指導要領に「オーラル・コミュニケーション」という言葉が
    用いられたとき以来だと記憶しています。 「コミュニケーション」という言葉自体は、
    「伝え合う」という意味合いで、ぴったりした日本語もなく、大分前から使われていた
  のですが、ここで一気に学校教育の現場で使われだしたのだと思います。
   ただ、そのときに、ふっと思ったのは、コミュニケーションの手段は声を出すだけでな
    く、文書を読んだり、書いたりするのも、聞いて情報を得るのも含まれるのに、何故、
   「オーラル」だけ、カタカナでコミュニケーションといったのだろう? 今更「英語はコ
    ミュニケーション」と言っても、もともと英語学習の目的はコミュニケーションなのに、
    ということでした。

  あえて、その頃にコミュニケーションと言い換えて学習内容に入ってきたのには、「英
  語をいくら勉強しても何も伝えられない、文法書も何冊か読みこなしたし、発音も口の
  形・舌の位置・・・と練習したはずなのに、いざとなるとちっとも英語で発信できない、
  英語で話しかけられると、途端に逃げ出したくなるし、外国人がたどたどしい日本語で
  「駅はどこですか」と聞いてくると、I can't speak English! と言ってその場を立ち去
  ってしまう。英語でコミュニケーションを取れるようになりたい!という日本人の業の
  ような願いを凝縮した言葉になっていたからだろうと思います。

   これから学習する人たちに、是非「コミュニケーション能力」を「育成」する授業をし
  て、気軽に英語で伝え合う能力をつけたい、ということになったのでしょう。そのため
  には、少しぐらい文法から逸脱してもいい、発音は日本語の訛りがあってもいい、とい
  う議論が行われているのですが、ここが元の木阿弥。英語の間違いや発音の訛りが気に
  なるから、しゃべるのもたじろぐし、書くのも億劫になってしまう。なんだかスッキリ
  しないところを堂々巡りしているように思います。

  私のところに公立小学校の先生から「コミュニケーション能力をつけるためには、コミ
    ュニケーション・スキルは不要か?」と鋭い質問が来たのは5年も前のことでした。日
    本海側の、小さな小学校で英語活動を進めておられる中で湧いてきた質問でした。
  私の答は、「スキルが未熟だと、コミュニケーションをとろうとする気持ちが萎えてし
  まうだろう、また、スキルを軽んじたコミュニケーションは、相手に許してもらう謙虚
    さが必要だろう、だから、やはり未熟なスキルが身についてしまわないような指導が大
    切。スキルの指導を皆で考えなければいけない。」でした。
   そして、今も、その気持ちは変わりません。

  積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成、そのために、何をしなければ
    ならないかですが、何事にも積極的に関わろうとするには、ある程度の自信が必要です。
   この「自信をつけてあげること」が教師にとっての課題です。そして、どんどん成長を
    続け、私たちを追い越して社会生活の一端を担おうとする子どもたちには、きちんとし
    たコミュニケーションをとろうとする意欲を持てるような、「英語の使い方」を経験さ
    せたいと思います。

  その「基盤」を作るのが「音」なのです。自分の音が英語らしくないのでは、と思うと
  不安になってしゃべる勇気が出ないし、聞き始めたときから不安が募るし、音のない文
  章を読むのは、判じ物を見つめているみたいだし、書こうとしても、頭の中で単語がつ
  ながりません。だから、先ずは「英語らしい音」を、分かるようにたっぷり聞かせるこ
  とが大切です。
  
  馴染みのある語彙や子どもたちが知っている借用語・外来語を上手に取り入れて聞かせ
  ると、分かった、だんだん分かる、そしてこんなルールになっているのかな?と推量で
  きるようになります。これが、ことばへの「気付き」です。
   気付きが起こるように聞かせていく。そして、読める!と思わせるような文字の見せ方
  をしていく。文字が抜けている単語や短い文に一つ二つ文字を入れれば、まるで自分が
  全部書いたような気分になれる。
  子どもは、言いたいことなら、言う。真似をしながら言いたいことをアドリブ感覚で言
  う、これがmeaningfulなパターン・プラクティスになれば、どんどん自信をつける。
  ということで、学習ストラテジーが生まれ、体験しながら、そのストラテジーを改善し
  ていく。そのときの、教師のうまいてこ入れがあれば学習効果があがります。

  今、小学校の現場で行われている指導方法を、厳しく検証していかなければならない
  時期に来ていると思います。

                            久埜 百合(中部学院大学)

リンク 現在までに掲載済みの「ぼーぐなん広場」リスト

久埜百合著教材のホームページ

研修・セミナーのご案内

新設しました
ぼ〜ぐなん教材に関する質問・疑問にお答えします


読者の皆さまへ

 「ぼ〜ぐなん広場」をお読みいただいてのご意見、ご質問等を、ぜひお寄せください。
 尚、どういうお立場からのご意見であるのか ということも重要ですので、
 公立小学校教師・私立小学校講師・公立小学校のJTE・塾講師・学生等を明記願い
 ます。

 又、お寄せいただいたご意見を、この「ぼ〜ぐなん広場」でご紹介させていただく場合
 もございますので、
  @掲載させていただいてよいかどうか
  A掲載させていただく場合、実名・イニシャル・匿名 のいずれをご希望されるか
  Bご連絡先のメイルアドレス (ご送信いただいたメイルアドレスと異なる場合)
 もお教えくださいますよう、宜しくお願いいたします。     

 尚、ご投稿は500字以内でお願いいたします。
 原稿の一部のみをご紹介するなど、適宜編集させていただく場合もございます。
 予めご了承ください。

 ご意見のご送信先: kayoko-borgnan@nifty.com (ぼ〜ぐなん 岩橋)