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現場からの疑問      

@英語活動には系統性のあるカリキュラムが必要では?            
A大人がカタカナをふるのは親切?
  春休みも残すところあとわずかになりました。桜もほころび始め、新学期を迎える準備を
しているようです。学校現場は、先生方の異動も済ませたばかり、新入生や転校生を迎え入
れる手筈や、新しい教材の確認など、お休みどころではない忙しさでしょうね。
 私のような者も、気分を一新、基本に返って新学期を迎えようとするのですが、中々前か
ら引きずっている雑念を拭い去ることも出来ずもやもやと過ごしています。この1年間に、
多くの先生方との出会いの中で心に残る言葉がたくさんありました。今日は、そんな言葉の
端々から見える先生方が抱えておられる問題のほんの一端について考えてみたいと思います。  

・英語活動の数々を先ず日本語で考えているんですよ。それを英語に直しながらアクティビ
ティを作っていこうとしているんです。
  これは、授業で子どもたちに口頭で表現させる英語を決めていくときに、どの学年でも似
たような英語のレベルの活動になりがちで、年間を通じて難易度を上げていくことが出来て
いないのではないか、という話をしているときに出てきた言葉でした。英語活動のカリキュ
ラム編成にあたって、系統性のある英語表現を選択することが必要ではないか、どういう根
拠を基に学年別の年間計画を作成していくべきか、という疑問を感じられた先生がふと洩ら
されたものです。

  現状ではどうしても、行事に合わせて選ばれた活動での言葉のやり取りを英語になおして、
子どもたちに覚えさせて、アクティビティに仕込んで授業作りをする、ということが多いよ
うです。まず学校行事や年中行事に合わせたゴッコ遊びを考え、それに必要な語彙を膨らま
せるクイズ遊びやカルタ取り活動を決めて、それから英語表現をあてはめていく、というこ
とになると、どうしても子どもたちが英語という言葉の仕組みを自力で考えようとするプロ
セスに焦点を当てることが難しくなります。

 「英語を教えるのではなく」「英語活動等国際理解活動」という授業作りでは、この現場
の課題が今年度も続くことになるのでしょうか。系統性のあるカリキュラムを作りたい、と
考え始められた先生方とご一緒に、小学校で英語に触れさせて子どもの生きる力を育むため
に何が出来るのか、子どもたちの学びの姿を見つめていきたいと思います。
 
・もう一つの言葉。子どもたちに何とかして英語をしゃべらせたい、音が分からないからた
じろぐのだとすれば、日本語にもルビを振って読めるようにしてやるのだから、英語にもカ
タカナを振ったっていいじゃないか。
  これは理屈があるようでいて理屈にあっていない、と即座に思いました。日本語の難しい
漢字にルビを振るのは、漢字の発音とカタカナの音とが一致しているのですから、全く危な
げはないのです。でも、英語にカタカナを振るのは、英語の音をカタカナの音に変えてしま
うのですから、これで「事足れり」とするならとても危険なことです。似て非なる音を子ど
もに与えて、安易にその場を凌ぐ術を授けているようなものです。何とかして正確な音を聴
き取ろうとしている子どもの努力を踏みにじることにもなります。「この程度でいいんだよ」
といっているようなものです。

 先生たちが算数や理科を教えるときの正確さを求める作業、社会科や国語の理解を深める
ときの厳しさを思うと、英語に触れさせるときにも、音の違いを選別する力をつけようとす
る子どもの力を信じて、子どもが音を獲得していくのを辛抱強く待ってあげなければなりま
せん。赤ちゃんが母語を獲得していくとき、周囲の大人や兄や姉たちは、皆弟や妹のたどた
どしい片言を聞き続ける辛抱強さを持ち、励まし続けているのです。

 まだまだありますが、今日はこの辺で。4月からも、先生方の呟きに耳を傾け、私も聞き
取り能力を高めていきたいと思います。

                         久埜 百合  (中部学院大学


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