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   英語らしい音を身につけるための口頭練習

Q: リズムに乗せて、機械的に表現練習を覚えさせる方法についてですが、それだけで終わら
     なければ、この方法も悪くないと思うのですが、この繰り返し練習を、どのように心の中
     で整理したらいいでしょうか

A: 英語特有のリズムを身につける練習であれば、それは英語習得上大切なことです。でも、
    もう一度このご質問を読み直し、問題とされているところを整理させてください。

  「パターンを覚えれば、応用して使えるようになるだろう」「覚えるためには、どうしても
    反復練習が必要、子どもたちに反復練習をさせるためには、手拍子などでリズムを取って
    あげた方が、覚えやすそう」  「なかなか覚えられない子にも、何とか英語の固まりを呑み
  込ませたい、それにはリズムを取って繰り返すのが早道ということなのだと思います。

    このリズムを利用するのが効果的である、という考え方は正しい、と思います。繰り返し
  て練習する、というのも、何事につけても大切なことです。友だちの電話番号を覚えると
  きも、買い物のリストを見ないで覚えようとするときも、やっぱり繰り返し復唱しますし、
  指を使ったり体を動かしたりもします。子どもたちが英語に触れ始めるときにも、大いに
  リズムを活用したい、だからこそわらべ歌にリズムがあり、おばあさんの昔話にもリズム
  があるのです。

  どうして、このリズムを利用することが危ないのか、そこに落とし穴があるからです。英
  語には英語のリズムがあって、たとえば Thirty Days hath September のようにリズムに
  乗せて月の日数を覚える例からも、リズムが言葉を支えているのは明らかです。何が落と
  し穴か?それは、私たちが授業で使おうとするリズムに、ともすると日本語と同じような
  リズム感で英語の文や句を言わせようとするからです。Do you have a book? これを下線
  を施したところにアクセントを付けて言い、1拍休符を入れると、4拍子になります。Do 
  you like swimming?  Can you cook spaghetti? なども同じ4拍子で練習させてしまうと、
  英語とは程遠いリズムになります。そして、子音に母音がくっついてしまう傾向がありま
  す。

  数ある教材を点検してみると、英語の音が崩れるのも構わず、音節をたくさん1拍に詰め
  込んだり、そうかと思うと意味に大きな影響がないから、ということで主語や動詞を抜か
  したりするものもありますから、気をつけたいと思います。英語圏のお母さんも、英語を
  子どもに聞かせるときに、聞きやすいから、とか、覚えやすいから、といってそういう省
  略をしたり、音節を幾つも重ねたり、ということはしません。そのあたりを注意したいと
  思います。

  ところで、「パターンをリズムに乗せて覚え込ませてから、ゲームやQ&Aで使わせる」
  という活動が、現在公立小学校で行われる指導方法として、圧倒的に主流ではないか、と
  いう質問も来ています。リズムを使う音声重視のやりかただし、自信を持って英語を使え
  るようにしている、という主張ですが、リズムが英語のリズムからは外れていることがあ
  ります。

  英語には英語のリズムがあって、それを子どもたちは巧みに身につけて行きます。 私の
  経験では、10歳くらいまでの子どもにとって決して難しいものではありません。日本語
  的なリズムを持つ英語を身につけてしまったときには、それを剥ぎ取ることのほうが大変
  です。
 
  ところで、もっと大切な質問が来ています。「このような練習を繰り返したにもかかわら
  ず、実際の場面で応用することが出来ない」、という質問です。これは、暗記させられた
  スキットの英語が、非常に限られた場面にだけ通用するものであることが理由として挙げ
  られます。その表現を子どもが言いたいことを伝えるために使う、というところまで消化
  させていないからだと思います。先生が言わせようとすることを言う、というのではなく、
  基本は先生が押さえても、伝える内容は子どもが選びながら言うように仕向ければ、英語
  が自分のものになります。

  I like bananas. I like ice cream.とカードの絵や先生の指示で文章を作るのでは、自分
    の意思ではなく、プロダクションだけを求められているので、意外と応用力がつかない、
  ということだと思います。何か思いついたものを付け加えたり、I like (spaghetti は言
  われちゃったから何かないかな、と考えて) I like beef stew. と言ったものの、あ、も
  っと凝ったものを思いつけばよかった、と内心思って、さらに別のもので I like …何か
  ないかな、と考えているものです。

  幼い子どもでも、やっぱり自分のことを言いたい、聞いてもらいたい、そして相手の本当
  のことを聞きたい、真実味のある内容で練習をすると、少し英語が下手なことなんかちっ
  とも気にせず、言いたいことを言い続けることができるものです。そこに、子どもの奇想
  天外な発想と出合うこともあり、教えることの面白さもあるのだと思います。こうして、
  子どもが英語を使い始めたときに、よく耳を傾けていると、不思議にイントネーションが
  英語らしいのです。ゲームをしているときなど、スッカリ英語らしい音の流れにのってい
  る子どもたちを発見することがあります。言葉を身につけているプロセスの不思議さに驚
  かされる一瞬です。

  教えた英語を吐き出させようとするより、聞かせ続けながら、英語を使いたくなるように
    仕向けているときに起こる子どもたちの自然な発話を待ちたいものです。

  どうやって、「いいたくなるように仕向けるか」。これからも皆さまとご一緒に智恵を絞っ
  ていきましょう。

                           久埜 百合  (中部学院大学)

Q: 最近、”How are you?”という問いかけに、I'm very tired. I'm sleepy. I'm sad.
  などと答える生徒が目立つようになりました。小学校での英語活動の結果のようです。
  I'm fine, thank you. の一辺倒にならないように、Good! / Great! なども自然に使
  えるように私はうながしていますが、あまり否定的な気分を答えるのは、たまのジョー
  クは別としても好ましくないと感じます。ただ、自分の気持ちを表現しようとしている
  子供たちの態度は尊重したいのです。こうした場合、どう指導すべきでしょうか。
                         アルペ グリーンハットクラブ 須貝

A: 「どういう場面でHow are you? を聞くことを想定しているかにもよりますが、教える
    ときは、定形表現扱いで、I am fine, thank you. And you?と言わせます。英語も日本
    語と同じで、軽い挨拶のつもりで尋ねている相手に、深刻な返事をしないのは、礼儀だ
  と思いますし、初対面の人から、How are you? と聞かれて、I'm hungry. と答えるのは、
  何か頂戴!といっていることになり、挨拶のつもりで言った人を慌てさせます。そんな
  失礼のないように、日ごろから指導しておくべきだと思います。
 
  通り一遍の挨拶だけでなく、クラスの子どもたちともう少しコミュニケーションを取り
  たい時は、How are you this morning?  Are you all fine?   Good.  I'm fine, too.
    But, I'm a little bit thirsty.  It is very hot today, isn't it?  Are you thirsty?  
  What do you want to drink? というように、発展させたりしますが、How are you? と
    聞いた時に、いきなり I'm hungry! と答えてくるような場合には、Didn't you have
   your breakfast?   When did you have meal last ? と、分からなくても畳み掛けて質
  問し、「何だかふさわしくないことを言ったかな」と感じてもらえるようにします。
 
  また、どうも元気がないなぁ? この子大丈夫なのかなぁ? と、気になるときは、How
   are you?  Are you OK?  Are you cold?  Are you tired? など、本当に気になることを、
    その子にそっと尋ねます。」
                                                     編集部

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