HP  (23)

どんな英語を使って
語りかければいいのでしょうか。
  
  
私たちが授業をするときに、一応今日の授業で「分かってもらいたい表現」というのを決めておきます。
それは多くの場合、各学校で学年ごとに考え出された年間計画に沿ったものの中から選ばれていることが
多いと思います。
例えば、「これは誰でしょう?」Who is he?  Who is she? のような、絵や写真を見せながらクイズ気分で
楽しめそうな表現をたくさん使おうとするときがありますよね。 そのときに、 私たちが子どもに聞かせる
英語が終始一貫 
 Who is he?  Yes, that's right.  He is Urashimataro.
 Who is she?  No, she is not Snow White.  She is Cinderella. 
となりがちです。
子どもたちに「英語で言わせる」ことで授業の成果を見ようとすると、 どうしても指導目標を一点に絞り、
Who is this/he/she?  S/he is 〜.だけを聞かせて言わせる、ということになってしまうのかもしれません。

でも、Who is s/he? だけでは、 授業が単調になる、 というか、同じ文型を覚えさせようとしているだけに
なってしまい、 これが日本語だったら、そんな聞き方も答え方もしないのに、 という表現だけになってしま
います。 「この人、誰だか知ってる? 」「当てられるかな?」「誰だか当ててご覧。」というような、 子ども
の心をくすぐるような語りかけではなくなるのです。 今日教える文型はこれだけ!と頑張ると、 味気ない
言葉のやり取りになってしまいませんか。その辺り、少し融通を利かせて、いくつかの表現を散りばめながら、
それでも焦点がぼやけないように心を配りながら、 Who is s/he? の回数を多くして子どもに聞き取らせ、
英語に触れ始めたばかりの子どもでもチャレンジできる「浦島太郎です。 シンデレラです。」のような言い方
だけは理解させていくようにすると、 楽しい雰囲気の言葉のやり取りになると思います。

ここにその英語のやり取りの例をまとめてみましょう。
絵本や、雑誌や新聞の人物の写真などを見せながら、
T: Who is he?  Is he Momotaro?  
C:  No!  源義経.
T:  That's right.  He is Minamoto-no-Yoshitsune.  Right. Then, do you know who he is?  
下線部分の語順にご注意。 ここで、子どもたちは、この語順の違いには気がつかないと思います。 それで
いいのです。 知らん顔でクイズを進めます。 この語順は、いろいろな言い方でも使えます。
Can you tell me who he is?  同じように、 Can you guess who he is?  そして、 元の語順に戻して、
Tell me.  Who is he? ここで数回繰り返します。 2回目くらいで答が出てしまうかもしれませんね。
T:  Yes, he is Saigo-san.  He is standing in Ueno Park.
    Now, do you know this girl?  What is her name? 
この名前を尋ねる言い方をよく知っているときには、 思い出すためにもこうして差し挟んだほうが「ウン、
分かるぞ」という気分になれると思います。 そして、 やっぱりターゲットになっている Who is she? に
戻します。 要するに聞き出す言い方はいろいろある、ということです。
C: ヘレンケラー?
T: Oh, is she Helen Keller?  No, she isn't.  She is not Helen Keller.  Who is she?  She is a nurse.
C: Oh, I know!  She is ナイチンゲール.
T: Yes. You are right.  She is Florence Nightingale.
聞かせるために使う英語の中には、覚えなくても大丈夫、 でも言葉を使うのはこんなふうなんだよ、という
暗示的な部分が入り込んでも構わない、 否、 入り込んだほうがいいと思います。 子どもたちの大切な時間
を貰って英語に出会わせる、ということは、 英語という大きなパイを隅から少しずつ齧っていくのではなく、
先ず、「ホラ、こんな大きくておいしそうなパイだよ。 中に何が入っているのかな。 アップルパイかな、レモン
パイかな。 どんな匂いがするかな。 当てられる?」と英語の全体を感じ取らせることから始まるべきです。
不思議なパイには、黒鶫が24羽入っているかもしれませんね。 食べ始める前に、この味はね…と説明されて
しまっては興ざめです。何となく分かったような、分からないような、 それでも指を差し出して舐めてみたい
ような、 そんな英語の全体像を、 すこしずつみせていくことで、 英語に興味を持ち、 自分から「チャレンジ
していこう!」という気持ちを育てたいのです。

でもそれがあまりにも変化に富みすぎていると、 子どもの言葉のルールに対する「気づき」のハードルを高く
してしまいますから、 ターゲットが分からなくならない程度に、 自然な言い回しを混ぜておく、 ということで
しょうか。 そこに、シラバスをデザインしてカリキュラムを編成する、 という作業の重要性があるのだと思い
ます。 先生方が苦労される「年間計画の作成」をするために、 どういう「ことば」を用意するのか、大きな課題
です。
                                  久埜 百合  (中部学院大学)

編集部


「ぼーぐなん広場」の編集作業をするとき、私たちは何回もメールを交換して、最後の原稿に辿り着きます。
その往復が編集の醍醐味で、関係者だけで味わっていては勿体ないなぁ、というやり取りが数多くあります。
今回は、その「舞台裏トーク」の一場面をご紹介させていただきます。

A:  'Oh, I know!  She is ナイチンゲール.'の箇所ですが、I know! とは言っても、小学生は、Oh, とは
   言わないような気がしました。

B:  Oh, I know! これは、I don't know. みたいに先生が連発していると、子どもはつい真似をしてしまう
   表現なのだと思います。私が教えていた学校では、いつの頃からか、Oh, I know! と出るクラスと、
   I don't know. どまりのクラスとがありました。カッコウつけている、という程度のことですが。
      何かをするように指名されたときにも、"No, not I." とLittle Red Hen のセリフで答えます、
  というか断ります。ふざけているので、やる気があっても、先ず "No, not I."と両手を広げます。
      意味がピッタリだから笑っちゃいます。こういう言語習得が大切なのかな、とも思います。

C:  「何で俺が指されるわけ?」という訳ですね。うまく使ってきますね。スゴイなぁ。
     注)Little Red Hen は、めんどりに小麦を育てるお手伝いを頼まれても、"No, not I."と断り
    続けた動物たちが、焼きあがったパンにありつけなかったというお話です。
B: Fantastic! とか、Oh, my goodness! とか、Ooops! など、子どもが拾ってしまう表現が沢山あると
  思います。

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