HP  (14)

HP子どもは文で答えてないけど、大丈夫? 

と聞かれて 
   
     
Q:  子どもたちと英語でのコミュニケーションを楽しもうとすると、自分が子どもたちに話しかけること
     が圧倒的に多い授業になってしまいます。その授業を参観された方々から、「子どもは単語でしか答え
     ていない。日本語も沢山使っている。これで英語力がついているのですか。」と言われてしまいました。

A:  ご質問を読んでいて、授業の最中に、どんな反応を子どもたちから引き出そうとしているか、が問題
     なのだと思いました。先生が子どもたちに話しかける英語を、そのとおりにオウム返しに言って欲しい、
     と願い、繰り返させるのか。それとも、先生の語りかけに対して、子どもなりの、子ども自身の心の動
     きを反映させる表情や一言の反応を待ち受けているか、の違いだろうと思いました。
 
   帰国児でもない限り、私たちの前にいる子どもたちは、自発的に英語を使うことはできません。先生と
     言葉のやり取りを自然にできるレベルには到達していません。先生が語りかける英語を聞き取ること
     で精一杯です。そして、聞き取れた英語があると、「わかった!」と驚きに近い表情で瞳を輝かせます。
 
    子どもたちが、先生の使う英文と同じレベルの文で応答できるように導こうとすると、先生が言うこと
     の意味を、しっかり分からせて、それを繰り返して練習させて、その文の音のつながりを再生できるよう
     にして、もう一度先生が問いかけ、語りかけ、子どもたちが反応できるように仕向ける、という授業を
     しなければならないのです。
 
    一見、それは英文を習得したように見えるかもしれませんが、そのためには、気持ちを込めてことばを
   使うことより、一つの表現の音のつながりをキチンと言う練習が先行しなければなりませんから、コミュ
   ニケーションとしては、2次的なものになってしまいます。第1次の情報交換ではなく、予定された、
     お互いに既に持っている情報を、あたかも"たった今、交換している"かのようなお芝居になっています。
 
    ご質問にあるように、「コミュニケーションを楽しみ、先生(英語を知っている人)からの語りかけが
     多くなっている」授業では、予定された"情報交換"ではない、ホンモノの"情報交換"をしているので、
     驚きがあり、自発的な心の動きがあり、発見があり、"情報交換"自体を楽しむことができるのです。
 
    参観後に、そのような質問をなさる指導者や保護者の方に、是非、心を通じあうコミュニケーションと
     しての英語でのやり取り、という視点で、子どもが単語や日本語を口走っている授業の実態をご覧頂
     いたら如何でしょうか。子どもたちは、初めて聞く英文に対しても、間髪を入れず、咄嗟に、知っている
     英語の単語や、それも間に合わなければ、口をついて出てしまった日本語で、先生との"情報交換"を
     楽しんでいるのです。
 
   勿論こちらは、子どもが分かるはずだ、と思われる単語を使って、少し声のピッチを高くしてわざと抑揚
     を明瞭につけたりして、分かってくれそうなスピードで話しかけています。日本語の説明をしなくても
     分かるように、時には実物や絵カードも媒体として使い、語りを続けています。子どもたちは、ちょっと 
     分からない部分があっても、次を聞いていると分かる部分がある、もっと続けて聞いていると、なんだか
     アレらしいな、と想像する、そしてさらに聞き続けていると、ホラ、やっぱり、そうじゃん!と思えるような
     内容らしい、と感づく、そうすると、分かったよ!という代わりに、つい、知っている英語の単語を言った
     り、そんな面倒くさいことはしなくたって、日本語で言っちゃえ!とばかりに日本語が出てきてしまう、
     という状況なのです。
 
   子どもたちは、聞こえた英文を日本語に直して、はは〜ん、なるほど、それなら、こう答えましょう、など
     という操作はしていません。先生の英語にぴたり!瞬間に反応しています。それは、英語を使っている姿
     に他なりません。
 
   英語に触れる時間が多くなり、体が慣れてくると、英単語のいくつかのつながり(チャンク)を使おうとし、
     何とか先生のように、きちんとした英文で言おうとする意欲を見せるようになります。そして、英語のルー
     ルを見つけようとして、いろいろとおもしろい類推をしてくれます。
    
   そこで、指導者として必要なのは、先生が語りかけるときに、なるべく文章で語り続ける、ということを励行
     することです。カタコトの単語と身振りだけのような表現は最低限にして、日本語で説明することも避けて、
     ジェスチャーや実物などをうまく使って、こちらの意図するところを理解してもらえるようにしましょう。
   
     指示されたとおりの英語が使えるようにする指導では、そのために作られた場面では使えますが、本当の
    「英語力」とはなりません。応用が利かない、イントネーションや、リズムも、それから単語の発音そのものも、
     不明確なままになりがちです。そして、一つの表現を英語で発話するための練習の時間が多くなるので、
     先生の英語を聞いている量がめっきり減ってしまいます。
 
   どちらが子どもたちにとって得になるのか、将来の英語学習の基礎作りのためにはどちらが効果的か、保護
      者の目を気にしないで、子どもたちの側に立って判断して授業を作っていきましょう。実は私たちの授業は、
      聞かせる量が多くても、必ず、子どもが言いたくなる段階に結び付けようとします。その辺りを、なるべく
      早く「広場」でおしゃべりしようと思います。続編をお待ちください。

                                            久埜 百合  (中部学院大学)


  

                
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