えいごリアン・コーナー

幼稚園の保育の時間に『えいごリアン』を見せています
 『えいごリアン』の制作を開始した頃に設定されていた対象学年は小学校3年生でし た。それを中学年対象にして4年生も見てくれるだろう、という意図があったのだと思 います。ところが 2000年春、放映開始直後から小学校現場や一般の視聴者から好評を 得たことで、その年の暮れ近くに、急遽次年度も制作を続けることになりました。あく までも、小学生が見てくれれば、というのが制作に携わった人たちのおおかたの気持ち でした。ところが、番組に寄せられた投書の中には、幼い子どもが描いてくれた"えいご リアン・キノコ" や "マヨ・ケチャ" のイラストと、お子さんの手元を見つめながら書い てくださっているお母さんのお手紙がたくさんありました。その多くが年間3回出版さ れていた『えいごリアン』テキストの巻末を飾ってくれたのでした。  制作を続けている間に、『えいごリアン』が想像以上に広範な年齢層で視聴されてい る、という実態が伝わってきました。1年生で、45分の授業に子どもたちの要求に任せ て3本続けて見せてしまった!という報告が届いたり、幼児が、キノコたちの色やデザ インで番組の内容を覚えていて、「小さい黄色いの」とか、「赤くてブツブツのあるの」 といって見たい番組を要求してくる、親はとてもキノコのデザインだけでは内容を覚え きれない、放映の順番でしか選べなくて困っている、などという悲鳴も聞こえてきまし た。その頃、キノコに名前を付けよう、ということで子どもたちに投書をしてもらい、 厳正な手順を経て名前を決めてホーム・ページで発表したこともありました。  どんな風に幼い子どもたちが、『えいごリアン』を受け入れていったのか、エピソー ドはたくさんありますが、ごく最近、幼稚園で年長さんの2つのクラスで見せたときの ことをご報告します。  その幼稚園は年間3回、特別行事として年長クラスに50分前後英語を体験する活動 を行っています。最初の頃は、1回目だけ保護者(多くが2歳以下の子連れ)と一緒に 体験することになっていたのですが、"好評"ということでこのところ毎回保護者が参加 しています。クラスサイズは30名、お母さんと幼い子ども、そして時にはお父さんや おばあさんも参加されるので、広い遊戯室はいろいろな年齢層の人たちで一杯になりま す。  『えいごリアン』を使うのは年に1回だけで、あとの2回は全く別の英語体験の機会 を作っています。今回使用したのはいずみ書房から販売されているVHS『えいごリアン 2』なので、1回放送分のショーの前後に、子どもたちがよく知っている歌 、Seven Steps をいろいろな言語で歌っているものが2つずつ付録として入っています。当日は、 「どんどん数えてみよう!"How many cards do you have?" "Five!"を使いました。  幼稚園では、"授業"とは言わないのでしょうが、一応50分近い流れを記してみます。 1.手を繋いで遊戯室に入ってきた子どもたちを、円形に並べられた小さな椅子に、   順番に座らせます。その後ろに、お母さんたちが座ります。小さな子どもたちの   声が絶えず聞こえてきます。 2.Good morning! 子どもたちは私の声につられて Good morning! と真似をします。   直ぐに、Good Morning の歌を歌います。How many times did I say "Good   morning"? 勿論何を言ったのか理解できなくてただ私の顔を見つめていますから、   もう一度歌って、数えて、4回であることを確認、4回ちゃんとご挨拶してね、   と促し、指を折りながら、Good morning, …と歌います。期待以上の大きくはっ   きりした声で一緒に歌ってくれますが、Good morning 以外のところは、むにゃ   むにゃメロディだけが聞こえていました。でも、歌えないところを黙っていよう、   と思った子どもは一人もいなかったのが不思議です。ちゃんと歌っている気分な   のです。 3.それから、衣服(これは制服なので、靴下の色で、ピンクの靴下の人、白の靴下   の人、など)を題材にして何人いるかな、と数えました。数えるときに指がでて   きてしまう子もまだいます。次に、小さな袋に入れて持ち込んでいた2センチ四   方くらいのタイルを取り出し、色と形で表現させます。色は green, red, pink,   yellow, orange, black, white, blue を知っていて、口に出しても言えるので、   色+square を繰り返し聞かせ、真似をしてしまう様子を観察しながら、さて、   全部でいくつあるかな、ということで数えました。みんなと一緒だと、臆するこ   となく18(たまたま18枚取り出していました)まで私の後について英語で数え   ました。なぜ、10以上でも平気で言えてしまうのか、これは謎ですが、誰かが   リードして数えていると平気で後について言うことができるのです。ためらわず   に何でも真似をしてしまう5歳児の能力は、いつものことなので不思議ではあり   ません。 4.そこで、やっと Shall we watch the Eigorian? と言って、テレビに近づきスイッ   チを入れました。子どもには知らされてはいなかったのです。最初に流れてきた   のは、中国語のSeven Steps でした。3回目の一、二、三を中国語で真似ている   子どもが数名いました。続いて、フランス語で Seven Steps が聞こえてきたとき   には、バレーを習っている子どもがいたのでしょうか、アン・ドゥ・トロァという   子どもがいて、その回りの子どもがまた真似をしました。 5.いよいよ『えいごリアン』が始まったとき、カルタだ!と叫んだ子どもがいました   が、後は急に静かになり、最初のスキットの画面に熱中、マイケルやユージさんの   カルタの取り方がおかしいらしく笑い声を立てるだけで、じっと見つめていました。   それからカードを数える段になったとき、声を合わせて、ユージさんに味方をしな   がら一緒に数え始めました。弦楽器の弦の数を数えるところでは、とても静かで、   馬頭琴のことを「見たことない!」と言った子どもがあっただけでした。ミニ・ユ   ージがロシア人のお宅を訪ね、マトリョーシカを数えるところは、一緒に数えて、   そして声をひそめて、「小さいね」と囁いていました。ソーセージの歌になると、   両手を出し、不器用ながら指を減らしたり、要所要所で拍手をしていました。数名、   身動きもできないほど画面に魂を吸い取られてしまっている子どももいましたが、   全員が歌を楽しんでいる様子でした。最後のスキットでは、てるてる坊主と降れ降   れ坊主の数を大きな声で数え、どうなるかと一瞬緊張し、お天気が変わるたびに大   笑い、体をよじったり、椅子からフロアへ身を投げ出して笑い転げる子もいたり、   15分たっぷり楽しんでいました。それでも番組の最後にまたキノコがでてきたとき   には、またシーンとなって、キノコがカードの下敷きになるところまで目を離さず   に見つめていました。お母さまたちも我を忘れたように見入ってくださっていまし   たが、連れて来られていた、1歳半を過ぎたばかりという男の子が、這い這い人形   のようにフロアに腹這いになったり、座り直したり、また寝ころんだりしながら、   じっと画面から目を離さずに見つめていて、じわじわとテレビの方に近づいていく   のも印象的でした。 6.興奮から冷めたところで、Clap your hands five times. などと数を変えて叩く遊び   をしました。わざと一つ多く叩く子どもが増えてきたところで、Clap your hands   for something you eat. Now spaghetti! というと、ゲームの説明をしないのに、   次々に聞こえてくる食べ物に手を叩き、"Piano!" と言った途端に、叩いてしまった   子どもを指さして大笑い。 7.そこで、いつものことながら当月誕生日のある子どもの名前を聞いて、Happy Birth-   day の歌を歌って終了、としました。  子どもたちが教室へ戻っていった後、残っていただいたお母さん方へ、授業の意図を 説明し、子どもの英語に立ち向かう様子を理解していただいて、焦らずに機会があった ら英語を聞かせる程度の触れ合いを深めてくださるようにお願いする、ということを毎 回行っています。その日は、這い這い人形の坊やの様子を思い出していただいて、早す ぎることはないこと、でも無理強いは禁物、と付け加えました。  『えいごリアン』は不思議と誰の心も捉えます。何回見ても飽きない、というのも有 り難いことで、「これ、見たよ」という子どもも、じっと集中して見ていました。                           久埜 百合(中部学院大学)                           

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